Makuake にてクラウドファンディングプロジェクトを実施している LiberNovo Omni というワークチェア (オフィスチェア) を、二子玉川の蔦屋家電にて試座してきました。その感想です。
長時間座っていたわけではありませんし、キーボード操作などのデスクワークをしたわけでもないので、実際に自宅で使ってみるとまた違う感想になるかもしれません。この点を踏まえて読んでください。
LiberNovo は企業名もしくはブランド名だと思いますが、Omni があまりにも一般語句なのでこの記事では LiberNovo Omni と呼称します。
デスクワークより、リラックスしたいときに優秀なチェアだと感じました。
デスクワークのためのチェアとしても機能面でオカムラなど業界大手のチェアに見劣りしませんが、メーカーがアピールする「自動フィット」には強い期待を抱かないほうが良いでしょう。
そんなことより、LiberNovo Omni の最大の魅力は、バックレスト (背もたれ) を倒してチェアに身を委ねると大変心地よいことです。オフィスチェア全般において、バックレストを後方に大きく倒すと不自然な姿勢になりがちです。しかし、LiberNovo Omni はバックレスト、ヘッドレストの調整機能が優れていて、バックレストを倒しても自然な姿勢を作ることができます。
気になるのは購入後のサポートです。
オフィスチェアは 10 年程度の使用が想定されるものであり、海外新興企業より国内業界大手企業のほうがサポートに安心感があります。特に LiberNovo Omni には電動可動ギミックがあるので、故障やその修理対応は心配です。もちろん現時点ではきちんとしたサポートを謳っていますが、企業活動は当初の想定通りに行われるとは限りません。気づいたら撤退、あるいは倒産しているかもしれません。そのリスクは、実績の少ない海外新興企業のほうが大きいです。
「オフィスチェアの上で休むことはないから...」という人には、機能や耐久性に安心感のあるオカムラ、コクヨ、イトーキあたりのメジャーなチェアが無難です。「PC で仕事もするし、だらっと動画を見たり音楽を聴いたりもしたいんだよね!」という人には LiberNovo Omni も良い選択なのではないかと思います。
LiberNovo Omni の特長としてメーカーがアピールしているのが、「バックレスト (背もたれ) が人の背中に合わせて変形する」という機構です。
私は紹介記事を読んで「ユーザーの背中の形状を検出して自動的に変形する」というものを想像していました。実際には、そのような高度なものではありません。大雑把に言うと「背中の S 字カーブの反りをボタンで手軽に調整できる」といったところでしょうか。左アームレストについているボタン操作で、背中の窪みに当たる部分が前方にせり出したり、後方に引っ込んだりします。「これであなたの S 字に調整してね」ということでしょう。
ただ、私のオフィスチェア経験では、バックレストが理想的な S 字を描くことより「腰をしっかり支える」ことの方が重要です。LiberNovo Omni は、せり出してくる部分が一般的なオフィスチェアのランバーサポートより高い位置にあり、長時間座っても疲れないかどうか、ちょっと心配です。
腰部分の前後位置を調整できるチェア自体がそもそも少ないので、その意味では好印象です。
LiberNova Omni のリクライニング機能は、次のような特徴を持っています。
注意したいのは「角度を固定できない」という点です。
深い傾斜角度でリラックスした姿勢を保ちたいなら、脱力してもバックレストが戻らないよう反発力を緩くしておく必要があります。しかし、緩いままだとデスクワーク中もびにょ~んと下がってしまうので、作業中は最大傾斜角度を浅めに設定するような運用になりそうです。リクライニングの反発力はかなり緩くできるので、体重 45 Kg の軽量級の私でも特に問題なく寝たままでいることはできました。
そして、総評で言及したように、バックレストを倒したときの掛け心地は、私がこれまで座ってきたどのオフィスチェアよりも気持ちがよかったです。その秘密は、バックレストを倒す動きに連動して腰部分が持ち上がることにあります。
一般的なオフィスチェアは、構造的に「バックレストを倒すとバックレストが腰から逃げていく」という動きになります (支点が座面より下にあるので)。そうすると、ふだん腰を支えてくれていたバックレストが役割を放棄してしまうのです。掛け直すことで対応できなくもありませんが、座面が深くなってしまうこともあり、掛け心地は悪くなります。オカムラのアンクルチルトリクライニングとかコクヨのシンクロロッキングとか、各社この点について頑張っているのだと思いますが、私はそれでも違和感を感じていました。
LiberNovo Omni は、ここに工夫があります。
Makuake プロジェクトページ内の「105° 120° 135° 160°」とバックレストを角度別に並べた写真を見てください。傾斜の支点は座面の下にありますが、バックレストの腰部分は位置が変わっていないことが分かります。バックレストをフレームから分離させて動かしているようですね。これにより、フレーム全体を倒してもしっかり腰を支え、自然な姿勢を保ってくれます。この点は非常によく考えられているな、と感じました。
ヘッドレストは次の点を調整できます。
上下の位置と角度の調整までは、オカムラやコクヨのハイグレードのチェアでもよく見かけます。しかし、前後に調整できるものは意外に少ないです。LiberNovo Omni は、この点において貴重な存在です。ヘッドレストがあまり前に出ていると、デスクワークでは邪魔に感じることがあります。一方、リラックスしてだらしくなディスプレイを眺めるときは、脱力しながらも頭を起こしたいので、ヘッドレストを前に引き出したいものです。
見た目はちょっと野暮ったくなってしまいますね。
前後位置と角度の調整は、チェアに掛けたまま後頭部に手を回す感じで楽にできました。上下の位置は... 試座ではしませんでした。
一般的なオフィスチェアと比べて柔らかく、ふわふわです。ふわふわは気持ちが良いのですが、座面のふわふわはデスクワークでは不適切な場合があります。
柔らか過ぎて腰が膝より沈むと、身体を腰だけで支える状態になります。これは腰を痛める原因になります。オフィスチェアを使うとき、腰は最も力が掛かる部分です。柔らかめのクッションで力が吸収されてしまうと、腰に余計な負担が掛かります。製品の説明では「座面のお尻の部分は硬めのウレタンになっているので大丈夫」と書いてありますが、やや不安です。
今回の試座では「沈みすぎ」と感じるほどではなかったのですが、キーボードの操作などデスクワークに類する動作を試してはいません。もしかすると、ウチで使っているうちに気になってくるかもしれません。
ヘッドレストも座面、背面と同様にふわふわですが、こちらは何かの支点、力点になることはないので気にしなくていいですね。とても気持ちよかったです。
暑がりな人は、ふわふわクッションは身体に密着して熱が籠りやすいかも... ということも念頭に置いておくといいかもしれません。私はまったく気になりませんが。
使用前に、自分で組み立てる必要があります。
...と言うとデメリットのようですが、これは「ユーザーによる分解を認める」ということでもあります。分解できると梱包容積が小さくなり、運搬にかかる送料が安くなります。何を言いたいかというと... 気に入らなくて中古で売りに出すことにしたとき送料が安く済むということですね。
オカムラやコクヨのオフィスチェアは組み立てられた状態で届きますし、容易に分解できませんから、これをメルカリで売ったとしたら送料が 9,000 円、大きなチェアなら 12,0000 円かかるわけですよ。分解できるとなれば 3,000 円、高くても 5,000 円ほどで済むのではないかと思います。これまで 8 台のオフィスチェアをフリマサイトで売ってきた私としては、分解できることはとても助かるなぁ... と思わないではいられません。
L はアメリカンサイズ、M はアジア人向けサイズのようです。全体の高さと座面の奥行が異なります。
身長 156 cm の私は M を試座してきました。座面の奥行、ヘッドレストの位置など、サイズが気になるところについても特に違和感はありませんでした。座面の奥行は、座面自体を前後にスライドさせて調整する方式のチェアが多いですが、本機はバックレストの前後調整 (S 字カーブ調整) で対応することになりそうです。